気仙沼市視察で感じた復興都市計画の実態と課題 [2024年度三陸地域訪問]
- Nishi Rikunosuke
- 4 日前
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西 隆之介
私は現在、都市計画・まちづくりを専門に学んでおり、その一環として東日本大震災の被災地である気仙沼市を訪問した。気仙沼市は震災後、国や自治体、民間企業と連携して大規模な復興まちづくりを進めており、全国的にも高く評価されている。特に、都市再生や地域コミュニティの再構築における先進的な取り組みはモデルケースとされ、国からも表彰を受けている。今回の訪問では、震災後の都市空間の変容や復興事業の成果、そして地域住民の暮らしの実情を自らの目で確かめ、現場から学ぶことを目的とした。
■復興の中に見えた課題
気仙沼市では、防潮堤の整備、土地のかさ上げ、災害公営住宅の建設などがUR都市機構などと協力して推進され、2020年度には「全建賞」などの高い評価を受けた。インフラ整備や安全性の確保といった側面では計画通りの成果を上げており、表面上は復興が完了したように見える。しかし、現地を歩くと、まちとしての「にぎわい」や「界隈性」は十分に回復していないと感じた。広大なかさ上げ地には商業施設が点在しているが、人通りは少なく、まちの中心としての活力は乏しい。また、海とともにあった生活文化や、地域住民のつながりが再構築されているとは言い難い。
この背景には、復興計画においてハード中心のアプローチが優先され、住民の生活動線や地域コミュニティといったソフト面が後回しにされたことがあると考えられる。さらに、若者の流出や高齢化の進行も、まちの活性化を阻む要因となっている。
インフラ面での成果は確かに賞に値するものであったが、まちに生きる人々の営みや息づかいが感じられない現状は、復興の本質が単なる物理的整備ではなく、「人の生活の再生」にあることを改めて示している。今後は、地域住民との対話やコミュニティ活動の支援など、より柔軟で持続可能なまちづくりが求められるだろう。

■ハードからソフトへ:今後の復興まちづくりへの示唆
今後のまちづくりには、「ハード」だけでなく「ソフト」を重視する視点が不可欠である。震災復興においては、防潮堤や高台移転などのインフラ整備が優先されがちだが、住民の暮らしの質や地域コミュニティの再生といった観点も同様に重要である。見た目には整った街並みであっても、人々の心に寄り添った設計でなければ、都市としての活気や魅力は生まれない。そのことを今回の訪問を通じて深く実感した。
執筆者
西 隆之介(岩手らばーず2024年度/ 都市科学部 都市社会共生学科 3年 )
編集
岩手らばーずHP係
<訪問概要>
[2024年度三陸地域訪問]
・訪問地域
岩手県大船渡市、陸前高田市、宮城県気仙沼市
・訪問期間
2025年3月10日(月)~3月11日(火)
・参加人数(学生名)
横浜国立大学「岩手らばーず」メンバー8人
(塚崎 真広, 前田 実玖, 木内 亮吾, 西 陸之介, 永田 光佑, 山田 光太郎, 髙橋茉那)
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