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「未曽有の大災害から学ぶ、記憶の『継承』」[2024年度 三陸地域訪問]

  • Maeda Miku
  • 2 日前
  • 読了時間: 4分

前田 実玖

 今回の被災地訪問は、私個人としては4度目ものとなった。しかし今回は、被災日当日の3 月11日の訪問ということもあり、過去3回よりも、

より心に響く、より深く考えさせら れる様々な思いと向き合う訪問となった。

■二か所の津波伝承館を訪問


 私たちは、陸前高田市にある「東日本大震災津波伝承館」、そして、宮城県気仙沼市にある「気仙沼市津波伝承館」の二か所を訪問した。そこで見た景色、聞いた話は、私の今後の人生を変えるのではないかと思うほど、衝撃的で胸を打つものであった。

 特に気仙沼市津波伝承館での経験は忘れられないものとなった。そこでは、小学2年生の時に気仙沼市内で被災した、21歳の女性、そして、震災当時まだ0歳だったという中学 生が「語り部」として私たちを先導しながら、被災当時の様子を事細かに説明してくれた。その中で、実際に訪問したからこそ認識することが出来た、津波の怖さ、悲惨さがあったように私は思う。

 例えば、屋上に上がった時。語り部の女性が、津波襲来時の写真を手に、「ここの高さまで津波が来ました」と、実際に指をさして説明してくれた。 その時私は言葉を失った。今までは、「気仙沼市には○○mの津波が襲来した」という情報だけを得て、実際にそれがどの程度のものなのかを想像できていなかった。しかし、実際にそのような説明を受けたことで、鮮明な形で想像をすることが出来た。

 その他にも、 校舎内に流れ着いた自動車、缶詰工場から流れ着いたコンテナなどを目にしたことで、津波襲来時の轟音・惨状が、今までよりもずっと詳細に思い浮かべられ、胸が締め付けられた。

気仙沼津波伝承館(旧光洋高校)屋上での語り部公聴の様子
気仙沼津波伝承館(旧光洋高校)屋上での語り部公聴の様子
校舎内に流れ着いた自動車を見つめるメンバー
校舎内に流れ着いた自動車を見つめるメンバー

■悲惨な過去を「経験」として繋ぐ


 私は訪問以前に、横浜市にある「かながわ平和祈念館」を個人的に訪れたことがあった。そこで、兵士たちの遺品や戦争当時の写真を見たり、戦争に巻き込まれ、父と叔父、妹2人を亡くした語り部の男性のお話を聞いたりした。

 私はそれまで、正直、「戦争」を身近に感じていなかった。悲惨な出来事であり、二度と繰り返されてはならない出来事だとはもちろん理解していたものの、心のどこかで「昔の出来事」として考えてしまっていた部分があった。しかし、祈念館を訪れたことで、一気に戦争に対する学習意欲が湧き、家に帰ってからネットで戦争について調べたりした。津波伝承館を訪れた後にも同じような感情が湧き上がってきた。「もっと知っておかなければならない。」そんな使命感に駆られた。伝承館は、そのような感情をもたらす、重要な役割を担っているのではないかと思った。

 戦争経験者が日本の人口の約1割にまで減っていることで、戦争の記憶の風化が懸念されているように、東日本大震災を経験した人たちも、いずれ減っていく運命にある。そのような中でも、伝承館が存続していれば、津波の恐ろしさは語り継がれ、単に 「過去の出来事」として処理されてしまうのではなく、「経験」として未来に繋がる感情を湧き起こすきっかけになるのではないかと強く思った。実際に、私は訪問終了後、すぐに自分が住んでいる地域のハザードマップを確認した。「大津波の襲来」という出来事を、 「自分事」として捉えられるようになった。そして、津波の被害で亡くなった方々、ご遺族の方々の悲しみ・無念さ・後悔…。伝承館で感じることの出来た感情の一つ一つを無駄にしてはならない、『だから』自分が同じ状況に出会った時にどのように行動するのかを考える必要があるのだと、心の底から感じた。

 伝承館訪問以外にも、津波の被害を受け、更地となってしまったかつての市街地の散策などを行った。「あの日まで、ここは住宅街だった。」「商店街があって賑わっていた。」そう言われても信じられないような風景が広がっていた。改めて、あの日あの時、三陸の日常が一瞬にして奪われたのだと実感した。

■訪問から感じた日常の『幸せ』


 私はこの訪問で、「日常」のありがたさを強く実感した。私は訪問中、大船渡市を流れる川で川切りに挑戦した。横浜の家に着いてからその時の映像を見返したのだが、「こんな日常も『幸せ』なのだな」と感じた。未曽有の大災害で亡くなった方々一人 一人に『人生』があり、そして一人一人に愛する『家族』がいた。まず、私たちに出来ること、それは、目の前の日常を悔いなく楽しむことであるのではないかとも考えた。

 日本は、災害大国である。近年は南海トラフ巨大地震の発生が近しいのではないかとも言われ始めている。そのような災害が起こった時に、悔いの残る選択をもたらさないために(自 分の命を守るために、大切な人の命を守るために)私は今を大切に生き、そして、過去の経験から学ぶ姿勢を忘れず、毎日を過ごしたいと強く思った。



執筆者 

前田 実玖 (横浜国立大学 都市科学部都市社会共生学科 3年 前田 実玖)


編集

岩手らばーずHP係


<訪問概要>


[2024年度三陸地域訪問]

・訪問地域

岩手県大船渡市、陸前高田市、宮城県気仙沼市

・訪問期間

2025年3月10日(月)~3月11日(火)

・参加人数(学生名)

横浜国立大学「岩手らばーず」メンバー8人

(塚崎 真広, 前田 実玖, 木内 亮吾, 西 陸之介, 永田 光佑, 山田 光太郎, 髙橋茉那)


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