「被災地を訪問して考えた復興と継承」[2024年度 三陸地域訪問]
- Mana Takahashi
- 8月11日
- 読了時間: 4分
髙橋茉那
私は今回が、東日本大震災後初めての被災地訪問となった。今回の訪問では、陸前高田市 ・大船渡市・気仙沼市に訪れた。植樹活動や津波伝承館での語り部の方々のお話などを通して、様々な学びを得ることができた。
■植樹活動に込められた住民の願い
一日目に訪れた陸前高田市 では、まず椿の植樹活動に参加した。植樹活動を行った場所は沿岸に近い平地で、一見き れいな草地に見えるが実際は瓦礫や大きな石が埋まっている土地であった。その理由の一 つとして、復興を早く進めるために大きなゴミの処理・除去を徹底して行うことができな かったため、沿岸付近の建物が建たない地域に震災で出た瓦礫や石をそこに埋めて放置したことが挙げられる。そのため、土地のある居場所での椿の植樹には多くの試行錯誤と努力が積み重ねられてきたことが分かった。また、その場所で植樹活動が始められたきっか けが近くの中学校から見える景色がただの平野ではなく、植樹という復興活動が行われているという希望が見えるものにしたかったという住民たちの願いに、復興というものはまちが元の状態に戻ればそれでよいのではなく、そこに住む人々が再び希望を抱けるまちに していくことであるということを学んだ。
陸前高田市では他にも津波災害伝承館を訪れ た。伝承館からは被災当時のまま残された建物が見えた。それは津波の恐ろしさや生き残 った人の高台へ逃げろという教えを忘れずに継承していくためだと思った。また、津波の犠牲者へ祈る場には、海が見えるところと見えないところの二か所用意されていて、そういった被災者への配慮は本当に深く被災者に寄り添った視点を持っていないとできないと感じた。

■復興に向けたまちづくりと伝承館での学び
二日目は大船渡市と気仙沼市を訪れた。大船渡市では、キャッセン大船渡とその周辺 地域を散策した。キャッセン大船渡は震災復興のまちづくりの例として挙げられていたの で訪れる前から非常に興味があった。キャッセンは全体的に茶色で統一されていて、きれいに整備されていると感じた。訪問日が3月11日で人があまりいないようにも感じた が、敷地内の通路には子供たちも政策に携わった机や椅子が置いてあったり、訪れた和菓子屋さんには常連のお客様がいたりしたことから、地域の人に親しまれていると感じた。 しかし、アーケードがないことや大型商業施設と比較すると店舗の種類や商品数が限られ ているため、住民の生活を支える存在となっているのかは少し疑問であった。また、バンザイファクトリーの髙橋さんの話から、住民の中にはキャッセン大船渡は政府が急いで作 った施設で、地域住民の需要に十分に応えられていないため、震災復興のまちづくりの失敗例だとも言われていることを知った。このことから、復興には人々の生活を支えるため の早急なまちの回復も求められるが、政府の一方的で短期的な支援ではなく、被災した地 域住民と協力した持続的なまちづくりをしていくことも重要であると考える。
気仙沼市で は、津波の被害があった気仙沼向洋高校のある津波災害伝承館を訪れた。震災当時のまま 残された校舎を語り部の方々と周った。実際に津波から生き残った方々の当時のお話を聞 かせていただき、津波の恐ろしさや緊急時における冷静な判断の大切さ、最後まで生き残 る可能性を諦めない気持ちの重要性などを学んだ。

■訪問後の視点の変化とこれから
以上のように、私は今回の訪問で、様々な震災遺構を訪れ、たくさんの人の貴重なお話 を聞かせていただくことで、身をもって心の底から津波の恐ろしさと、震災の記憶や教訓 の継承がどれほど大切であるかを学んだ。また、訪問時に見えた海は穏やかで、津波の被害を体験したことのない自分には普段ならきれいだなとしか思わないものであるが、震災遺構や被災地から見える海は切なく、胸が締め付けられ、少し脅威を感じるものであるように映った。津波の記憶を後世に継承し、二度と悲惨な被害を出さないように備えておく ことが大切であること、復興からのまちづくりでは地域住民と協力して進めていくことが必要であることなど、今までよりも深く新しい視点でまちを見て考えることができた。今回の訪問で得た知識や経験、気持ちを忘れずに生きていこうと思う。
執筆者
髙橋茉那 (岩手らばーず2024年度/ 都市科学部 都市社会共生学科 2年 )
編集
岩手らばーずHP係
<訪問概要>
[2024年度三陸地域訪問]
・訪問地域
岩手県大船渡市、陸前高田市、宮城県気仙沼市
・訪問期間
2025年3月10日(月)~3月11日(火)
・参加人数(学生名)
横浜国立大学「岩手らばーず」メンバー8人
(塚崎 真広, 前田 実玖, 木内 亮吾, 西 陸之介, 永田 光佑, 山田 光太郎, 髙橋茉那)
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